首都防衛シミュレーション

思考が切り開く新未来

国、東京都、各省庁の首都直下型地震予測の比較検討について〜内閣府

ネットを検索すれば様々な主体の防災関連の資料を見ることが出来るのですがなかなかの分量です。
出来るだけ上手に全体を捉え当ブログのテーマに沿う部分を抜粋してみたいと思います。

・首都直下型地震の対応の仕組みざっくりと

あえて平たく書いてみます。先ずは国、内閣府です。

首都直下地震対策大綱

と言う計画書がPDFであります。プリントアウトしましたらA4で38枚でした。
これは国の基本でありベーシックプランなのでかなりざっくりな文章です。要は東京都が実際の中心的機関だと言うニュアンスでまとめられている感じがします。ある意味穴だらけの議論に聞こえてしまうところもあります。
例えば3日の備蓄を奨励するセンテンスが多発します。3日以降が本番ではないでしょうか。備蓄が切れたらどうするかが大事なところなはずですね。

都、国の各省庁の役割分担(権限)の統括として特に国としては首都機能維持と他国からの援助の窓口という風にまとめられている感じです。

首相官邸に本部、有明に現地対策本部。ここで一都四県のセンターを設置。川崎港からの支援物資を統括するプランを提唱しています。東京湾における津波は小さな規模と想定の上だそうです。
印象としては国家権力の采配とのお墨付きで国民に寄り添わない対応を押し付けてくるのではと懸念されますね。

専門家である福和先生が暴動をすら懸念されていらしたのも頷けてしまうところです。
無人となったコンビニ等の店舗に対する盗難行為を暴動と位置づけほぼ不可避として想定しています。
暴動をエクスキュースにしたいのだろうかと勘繰ってしまいますね。
内閣府担当部署に電話で簡単な質問をしたところボランティアに期待はするが起点となる場所等の不明瞭さによりハードルがあると認識しているとの事でした。
ならばその様な場を作れば良いのですけれど。
何しろ逃げ腰な印象は拭えません。

内閣府防災に膨大な資料

ウェブ上(内閣府防災情報)には相当な量のPDF資料がありちょっと全てを網羅するのは難しいかも知れません。
現時点(2022年)では平成25年にまとめられた ’ 首都直下地震対策検討ワーキンググループ ’ の見解に基づいたスキームを組んでいるとの事でした。

当ブログでは西荻窪プランに繋がりそうな幾つかのセンテンスを手短に抜粋して感じを掴む程度にしておこうと思います。

以下抜粋

●首都直下地震対策大綱 より

(1)首都地域は、政治中枢、行政中枢、経済中枢といった首都中枢機能が極めて高度に集積し、かつ人口や建築物が密集している。この様な首都地域において、大きな地震が発生した場合、災害発生後、都県境を超えた広域的な災害応急対策に不可欠な政治・行政機能や、我が国の経済中枢機能などの首都中枢機能の継続性の確保が課題となる。さらに、他の地域と比べ格段に高い集積性から人的・物的被害は甚大なものになると予想され、その軽減策の推進は我が国の存亡に関わる喫緊の根幹的課題である。
本大綱では、このような「首都中枢機能の継続性確保」と「膨大な被害の軽減と対応」を図るという視点から、”首都中枢機能の集積地域”や”人口や建築物が密集している地区”を対象エリアとした。

●首都直下地震対策検討ワーキンググループ内、首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会 報告書全体要旨第二条 より

官民一体となった様々な主体間の連携体制の強化
首都直下地震への対応に当たっての各主体間の連携については、一定の取組は見られるが、未だ十分とは言えない。
連携不足の要因の1つは、業務継続計画の策定単位や防災への取組単位が組織ごとになっているためであり、連携を具体化していくための仕組みが必要である。また、他の要因としては、責任の所在にあるとの指摘もある。

連携の動きを加速化するためには、官民の主体を幅広く集めた場を設置し、情報共有、各種課題の検討等を実施していくべきである

求められる連携の態様については、第一に国の各省庁間の連携であり、さらに国と東京都、国と9都県市、行政・中枢機関とライフライン、インフラ事業者等の連携の具体化が求められる。地域レベルの連携や、金融決済、医療、燃料、物流等分野別、業界別、テーマ別の連携、さらには官と民の連携に向けた幅広い検討が期待される。(実践を想定した訓練体系の整備) こうした観点から、今後は、

課題発見型訓練や多主体の参画・連携を重視した訓練、分野別・業界別、テーマ別の訓練等を体系的に構築し、計画的に実施していくべきである

●首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会 報告書 (内閣府)
平成24年 3月 第8回

p26~

4. 官民一体となった様々な主体間の連携体制の強化連携に向けた一定の動きは見られるが、未だ十分とは言えない。 連携を加速するため、新たな「場」の設置等取組の具体化が必要
国と都県市、中枢機関とライフライン、インフラ事業者等、地域レベル、業界別、テーマ別等求められる連携の態様は多様

(1)連携の重要性
各機関が業務継続の実効性を確保するには、各機関がそれぞれの計画の実効性を高めるとともに、各機関は相互依存の関係にあることから、高い実効性を持つ主体間の連携により相互確実性を高めることが重要である。特に、首都直下地震のような 広範囲に被害が発生する災害の対応に当たっては、ライフライン、インフラ事業者間 をはじめ重要な関係機関間の緊密な連携が必要である。また、各主体の復旧は相互に依存しているが、依存している部分が現在は推測の下に成り立っている。その推測 が本当に成立するかどうかは、各主体の取組の足並みが揃うか否かにかかっている。 さらに、首都中枢機能の継続性確保のように、行政のみならず、これを支えるライフライン、インフラ事業者をはじめ首都中枢機能を構成する多数の主体の業務継続が求 められる場合には、連携の重要性はより一層高く、非常時だけでなく平時からの連携が極めて重要である。
このため、現在の首都直下地震対策大綱等においても、連携の重要性については繰り返し指摘されている。

例えば、首都直下地震の発生を受け、国はあらかじめ定められた具体計画に基づき、救急・救助活動、医療活動、消火活動、輸送活動等を速やかに開始することとされており、情報が不十分な初期段階においても、計画に基づきこれらの行動を開始することとされている
その後の対応は、被災状況等の情報に基づいて、計画されている活動内容の修正を行いつつ的確な活動を実施することとされているが、この場合、的確な活動がどの程度実効性をもっているか否かが問題である。

p29~

3国と9都県市
現在、首都直下地震対策大綱等の計画体系が一定程度まで策定されていることにより、発災時の国と東京都・関係県市との連携の枠組みは策定されている。

例えば、国が調達した物資は、広域集積拠点に集められ、その後、都県により最終目的地に運ばれることが予定されているが、その場合の国と都県の調整はどのような形で図られるのか。 

国から地方公共団体へと受け渡される物資の一連の流れは、両者の緊密な連携によってはじめて成立する。したがって、計画をより着実に実行に移すことができるよう、平時からの連携強化、具体的な調整が強く求められる。
また、非常時にこれらの主体間でどのように情報共有、連携を図っていくかも課題であり、災害規模に応じて、国、都道府県、区市町村の連携、支援の仕組みは柔軟に変化させていくべきである。

p27

(4)連携を加速する「場」の設置
連携の動きを、今後さらに一層加速化するためには、新たな取組が不可欠である。
多種多様にわたる首都直下地震の関係者を広く包含した情報共有、情報連絡の場は設定されておらず、今後は、首都直下地震対策に関わる、官民の主体を幅広く集めた「首都直下地震対策協議会(仮称)」のような場を設置し、情報共有、各種課題の検討等を実施していくべきである。
また、こうした連携の場については、国と地方公共団体、行政と民間、各機関とライフライン、インフラ事業者等、さらには地域として、業界として、特定分野毎等、それぞれの枠組みで設置、構築していくことが望ましい。
平時にできないことを非常時に実践することは極めて難しい。平時から、連絡・調整、情報共有し、合同で訓練を実施して脆弱点を発見し、課題解決に向けて協働して検証・検討する等、連携を具体に実践していくべきである。 連携なくして脆弱点の発見は困難であり、各機関の計画の実効性を担保していくためには、こうしたそれぞれの枠組みの連携が欠かせない。

p29~

国と東京都
首都直下地震対策大綱においては、「防災対策を一義的に担う地方公共団体と、 積極的に被災地方公共団体の支援に当たるべき国との総合的な連携が極めて重要である」とされているが、首都直下地震で大きな被害を受けると見込まれる9都県市の中でも膨大な人口を有する東京都との連携は極めて重要である。
東京都のエリアは、首都中枢機能を担うほとんどの「機関・施設」が存するのみならず、我が国の主要企業の本社・本店が集積している地域であり、首都中枢機能の継続性を確保し、我が国経済の継続性を維持する上で極めて枢要な位置づけを有することは明白である。また、首都直下地震による被害の規模を見ても他県に比して大きな被害を受けることが想定されており、帰宅困難者数や避難者数も大きな割合を占めている。

したがって、災害対応に当たっても、国と東京都のより強い連携が求められるが、現在の状況は未だ十分と言い難い

さらに、東京都下の特別区、市町村は、地域における災害対策を一義的に行う地方公共団体として、予防対策、応急対応、医療救護、 避難等その役割は多岐にわたり、東京都と連携を取りながらその役割を果たしていくことになる。国と東京都、さらには区市町村が、それぞれの役割を連携して果たしていくため、連携の仕組みを具体化することが求められる

p31~

6官と民
首都圏生活者の生活再建を支援するためには、行政のみによる対応には限界がある。

首都直下地震対策大綱においても、「膨大な被害の発生が想定されることから、 公的な被災者支援活動だけでは限界がある」旨明記しており、自助、共助の強化の必要性について言及している

経済主体を担うのは民そのものであり、民間企業の業務継続計画策定率の更なる向上が求められる。
一方政府は、平時から、発災時、民に何を期待し、官と民でどのように協力を進めていくか、そのための環境整備をどう図っていくか等について、平時より準備しておくことが極めて重要である。具体的には、例えば、保険業界や建設業界等、被災者の生活再建支援に関わる関係者の場合には、どのような業務に携わってもらうのか、その際の官との役割分担はどうするのか等について検討が必要である。こうした業界に限らず、民に期待する事項は少なくなく、幅広く検討していくべきであり、そのための幅広い連携が求められるところである。

以下は参考

Twitter吉井博明
吉井博明先生は、事前に一律の避難基準を設けると空振りが増え信用度が低下し、国が一律に避難勧告することは韓国が行ったが国の担当部署の業務が過多になり支障が生じたと述べていました。

以上抜粋終わり

さていかがでしたでしょうか?

官と民の連携の必要性は説くもののハードルは高そうです。時系列的な問題点、つまり被害想定からの初動と実際の被害状況の把握からの調整と言う物言いにも説得力は欠けますね。

西荻窪プランがどうして必要かが導き出されると思います。

次の記事では東京都の最新予想も織り混ぜ抜粋してみようと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

筆者の経歴から見る西荻窪プラン

ここで簡単に筆者である私自身の経歴をご紹介させていただきます。

私は大学を中退し音楽活動を継続しながら実家の家業である不動産業を行なっていました。
東京多摩地区の小さな会社ではありましたが不動産業の多くの分野を経験してまいりました。
売買、賃貸管理、斡旋、土地仕入れ、加工、造成、戸建て住宅の建築、販売等です。とても多岐に渡る業態を知る事となりました。
残念な事に東日本大震災のタイミングで会社の資金繰りが困難になり閉業する事となりその後いくつかのアルバイトを経て食品物流の仕事を5年程経験しました。
その間には兼業的に知人の健康食品会社の販売(アルバイト)も経験しました。
そして現在はプロパンガスの保安業務員として地元の地域を広く動き回っています。

以上がざっとではありますが私の職歴です。

不動産業の経験による影響から見る西荻窪プラン

不動産業には大まかな分業的な棲み分けとでも言うべき業態がありましていわば各業者の得意分野と言った感じで仕事の分野は分かれています。
私の場合は父が会社を閉業するにあたり会社の所有する簡単には販売が難しいような厄介な土地をどうにか活用する少々特殊な事案にもいくつか踏み込む事となりました。
その中で経験したのは土地に関する法令や建築に関するそれらのプロのレベルにおいてすらわかりずらい様々な行政機関の仕組み、対応の事でした。
いわば何事であれ利益を出すこと(お金を儲けること)に付きまとうしがらみのようなあらゆるハードルを多くの人々が自身の牙城としているかの様な事象に沢山出会う事となりそれが西荻窪プランの一つの方向づけとなっているのだろうと自身で思っています。

つまりは前記事の福和先生が立ち上げられましたホンネの会の意義がとてもリアルに感じられてしまう所でもありました。

防災について言えば幾つかの中心的な主体、この場合内閣府、東京都、国交相経産省、と言ったそれぞれがどの様に絡みずらさを持ちそうな状況なのかも少々骨は折れますが精査する事は可能です。
それぞれの主体の首都直下地震に関する予測もウエブにて比較する事も出来ます。
そんな事を考えながらしかし実際に自分たちの身に禍が降り注いだらとやはり考えてしまいます。
少しの社会合意こそが決め手となるであろうとの予測を大胆に実現可能性を前提として追求してみる事が自然に必然と思えてきた次第であります。

食品物流業の経験から

さてその後ひょんな事から知人の伝である食品物流の会社に籍を置く事になりました。
これが大変に楽しかったのです。いかに綺麗にいかに素早く仕分けを行うかと言う点にいわばゲーム性を見出しながらの勤務でした。

限られた作業スペースを与えられその中での仕分け作業を考える時は細やかに場所と物とを配置し人の動きと絡みを読み、作り、導き生産性の高さを求めてあらゆる事を考慮して行くのです。トラックで物が入庫され置き場へ運ばれ保存を考慮し仕分けの作業を進めます。
仕分けを終わらせたカゴやパレットと呼ばれるプラスチック板などを機能的に集約させ出荷させます。
最も面白いのはいわば直感的とも言える読みの部分です。物流とは英語で(ロジスティックス)ですから何とも理屈っぽい感じがしますが最後は人間的なひらめきとか絡みとかが大事になって来ます。組織の人間模様やホンネと建前もきっちり把握しながらの作業におけるモードチェンジのタイミングも大事です。
その辺りは個々の持ち味ではありますが労働生産性という数字が簡単に見て取れますから数字の勝負に還元されます。
そういった現場でやはり人間の能力や魅力と言うものの素晴らしさに出会うととても感動します。あり得ない速さと綺麗さの仕分け作業をする人が稀に居るのです。
読みが違うのです。全体を俯瞰している視野が。そして誰よりも早く効率性を導き出し物と人の場所と動きの流れを見抜くのです。

そんな職場で必死に鍛えられた経験から自分のロジスティックスのデータに基づく客観的な能力についてはしっかりと把握するに至りました。
楽しく効率性を追求していた日々でした。

そんな視線から首都直下地震の事を調べて行くとうずうずと疼いてきます。

これは西荻窪エリアがキーになるぜ。コンセンサスがあれば機能するぜ。都内の窮状(カオス)が地点毎に絡みつつ落ち着いて行くはずだぜ。

と言う風にです。これがあるのとないのとではムチャムチャ違うのではないかと思います。

事前準備とでも言うべき防災のコンセンサス作りとシンプルな作業マニュアルのような何某かをこさえておくべきだと思います。

生産効率が劇的に変わると思うのです。ポイントはトイレ作りと物資の徒歩による流通です。
先手必勝となればいいなと思っています。

LPガス保安業務員としての活動

しかしハマってしまいますと物流の仕事は段々と体力的に厳しさを感じ始めて来ました。性格的に手を抜くのも苦手でしたからついつい無理をしてしまう。
そんな時に地元のプロパンガスの保安業務員の募集を見かけ応募する事にしました。
前職の経験もそれなりに活かせそうでしたし。久々にマークシートの試験を無事にパスし資格を得、今では地元のエリアを忙しく動き回る日々を過ごしています。
インフラストラクチャーに関連する現状を現場にて知り得る立場になったわけです。
プロパンガスの歩みとは約70年。戦後の日本の歩みとほぼリンクします。都市ガスと共に調理とお風呂にとほぼ全世帯必須のインフラです。

いわば唐突に訪問をさせて頂き、お客様のお宅にお邪魔させていただく訳です。その数程のたくさんの方々、たくさんの家庭の様子を窺い知る経験をさせてもらっています。

多くの人々とガスの事を解決して行くと言うプロセスを生業にしている事がおそらく防災と言う局面においても何かのプラスと働いてくれそうだなと何となくですが思っています。
声のかけ方とかものの言い方とか。これってすごく大事になるはずですよね。

ガスの事で言えば70年間の技術とそれらをフォローアップする規制や法令との整合性を見極めるのがなかなか大変です。
この点については何しろベテランの方々とのコミュニケーションにつきます。最初は教わるのも教えるのも結構大変でもあります。
現場に行ってみると物凄く古い設備だったりよく判らなかったり。

何しろ上司の様なその道のプロの方々は綿密な知識と情報に精通されていらしゃる訳です。
技術、それらを伝達するコミュニケーションの難しさを知る事によりそれらのソリューションへと導いてくれる何事かをいち早く発見できるような仕事を日々心掛けています。
西荻窪プラン及びシミュレーションにおいて生きてくると良いなと思っています。

 

以上のようなバックグラウンドを持って、このブログを書き進めて参りますのでどうぞよろしくお願いいたします。


最後までお読み頂きましてありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

率直なホンネ主義者 福和伸夫氏 による「 必ずくる震災で日本を終わらせないために。」 時事通信出版局 2019年  

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この書籍は建前論を排し率直な事実を分かり易く伝えている良著です。大変に参考になりました。

福和氏は民間の建設業界から学者に転向され、実務的かつ素直なスタンスで建造物の耐震化促進を中心に減災対応を追求されて来られた方です。
専門的な領域はそれはそれとして防災に対しての考え方の切り口としてのヒントに溢れた一冊だと思います。

日本人は基本的には真面目だと思いますのでそれぞれの立場の範囲内では実に防災面においても対策は進展して来ていることとも思うのですが、如何せんその ’立場の範囲’ 以外に対しては信じられ無い様な嘘偽りやまやかしが横行してしまっているのが現状であると言えるのでは無いでしょうか。

その現実認識を後押ししていただけたのが福和先生の言説と言うことになります。
以下わかりやすくポイントになる部分を抜粋し論じてみたいと思います。

● より良い答えの落とし所を探し出すために必要な事

福和氏は平成30年に内閣府が防災対策実行会議の下に設置した「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」の主査を務められました。

それまでの東海地震中心の震災想定の時代から南海トラフ、首都直下型地震へとシフトし、また各省庁を束ねる形の新たな内閣府主導の政策論議という政府の方針転換との符合により中央防災会議の下に防災対策実行会議はスタートしました。

書籍本文中、若干の謙遜の意味も込めて自身がワーキンググループの主査を任ぜられた経緯について民間企業と学者の世界の両方を知る自身のキャリアを指摘し、誰しもが敬遠しがちな防災の事案に対し ’ より良い答えの落とし所 ’ を導くためには学者的なスタンスだけではなく民間企業で養ったバランス感覚が必要であると自身に言い聞かせたと述べています。

ボトルネックを洗い出すホンネの会

南海トラフ地震や首都直下型地震の危機が叫ばれる昨今、あらゆる主体(国、自治体、企業、等)において防災の責任者となる事は誰しもが気が重くなる事でしょう。
完璧な予測も対策も言わば実際には不可能でしょうし、それこそ東京に至っては危険さと巨大さにおいて破格の規模なわけですから。
どこかの時点で建前論に逃げ込みその人自身の立場を守って行かなければならなくなるのは仕方が無いのでしょう。学者であれば尚更自身の立場を優先せねば立居行かなくなるであろう事は容易に察せる所でしょう。
結局そういったスタンスによりあらゆる防災に関する事柄にボトルネック( 建前のみの空論 )が溢れかえってしまっている訳です
しかしそれでは自らを守ることが出来ないと立ち上がる主体が出てきます。

福和氏の地元、名古屋においては地元企業のトヨタが先鞭をつけることになります。

最小の ’官’ の単位である町役場と官民の防災面における情報共有をスタートする、そのきっかけを生み出したのが日本ナンバーワンの企業トヨタという訳です。
福和氏はその流れにおいて中心的な働きをされますがさらにそのきっかけを元に地元の経済界を中心に防災に関するボトルネックを洗い出すべく ’ ホンネの会' を立ち上げられます。
あらゆる関係性がある主体の有志を募り防災に関する協調関係の構築に乗り出し進展を観ます。
建築物、インフラ、行政機関等に関して現実的な情報共有体制の構築及び制耐震化促進の駒を進めて行かれます。
それらの実績が時の内閣府にまでインパクトを持ち中央防災会議においても重要な働きを信任される事となった訳です。

名古屋では出来ても東京では出来ない

その様な経緯で主に南海トラフ地震について書かれた書籍を刊行された福和氏ですがその文中に大変に考えさせられる一文を見出しました。
トヨタという大きな企業を中心に多くの主体が自らの防災意識を高め、対応を真剣に考えて連携して行く事を名古屋という風土に於いては可能性を見出す事が出来た。
地元に対する郷土愛や歴史に裏打ちされた風土を起点にすればそれぞれの立場も乗り越えられる事が出来ると分かった。

しかし東京ではそれは出来ない。それぞれのしがらみに縛られ互いにライバル視し争い合い郷土に対する愛情も希薄な土地柄だから。

という訳です。これには都民としては考えさせられます。

名古屋から財界のパイプを利用して東京もじわじわと改善して行くというやり方の可能性には触れられてはいましたが。それもいかがなものなのでしょうか。

・企業秘密だから情報共有が出来ない

トヨタ王国と呼ばれる中部地方に於いてその経済的な基盤を真剣に守る事を考えると言うのはある意味当たり前のことだとも言えるはずです。
インフラ、企業の設備、人員、エネルギー等産業構造をいざと言う時にいかに守るか。
ホンネで語り合い組し合う。そうして導き出された答えは‥

表には出せないそうです。重要な企業秘密を含むからだそうです。

名古屋においては一企業の主体性の方が国家機関以上の信頼を勝ち得ていると言う事でしょう。
しかしでは東京はどうすれば良いのでしょうか?

国家としての日本国というのはどの様な主体性を持ち得るのでしょうか?

色々と考えてしまいます。

より良い答えの落とし所 
( 誰も責任を取れない 確実な情報も出せない中での ) 

とは先ず共有され得る主体性を見定めるところから始めなければ見出せなさそうです。
政府って何? この会社って何? この専門家って何? この避難所ってどうなの?
から各々考えて行く必要がある。

これでは思考停止も止むなしと言ったところでしょう。

・それでもまだ東京に住みますか?

文中において福和先生の語り口を見てみますと南海トラフと首都直下型地震の対比が分かりやすい箇所が見受けられます。
震災直後の混乱を表現するのに ”一週間を楽しんで避難生活を送れば良い” 。こちらが南海トラフ地震
対して首都直下型地震は以下です。

首都機能維持の為に環七より内側のエリアは閉鎖するかも知れない
=大多数の被災者は放置と言う事でしょうか?

繋がりの希薄な人々の孤立化は必至
=あえて触れられていないだけの事。思考を停止しているだけ。

" さすがの日本でも大きな暴動が起きるかも知れません "
=外国の侵略に耐えられなくなるのでは?

つまり現状において東京に住むことはこと防災的な観点から見て自殺行為に等しいと述べられていらっしゃる訳です。
おそらく福和氏のみならず日本の識者諸氏の本音においては最早被災後の東京の放棄は織り込み済みなのかも知れないとも思われます。

少しの社会合意が取れるだけで安全度は格段に上がる

本文のP.63に "ちょっとの工夫で社会の安全度は格段に上ります。少しの社会合意が取れるだけでずいぶん多くの命を守れるはずなのです "とあります。
であるとするならばその社会合意の前提となる何事かを戦略的に補完しておけば良いということになります。西荻窪プランとはまさにそのコンセプトに基づいています。
この良著からヒントを得て考えたのがこのコンセプトと言う訳です。

社会合意=コンセンサスこそが武器

現代では情報ツール自体はとても進化した状態の社会が実現されているわけですから実際の機能的な何事かを提示し共有して行く事でプラスアルファの波及効果を求めて行く事が可能でもある訳です。
第二次世界大戦時代のファシストプロパガンダ(洗脳)を武器とした過去がありますが現代ではある意味もっとシンプルに ” 少しの社会合意 ” にあえてとどめておく様な戦略の方が力強いインパクトになる様な気がしています。
それにより主体間の円滑な連携性を逆に生み出すはずでは無いかと思うのです。
力めば逆に負の連鎖(潰し合い)です。

もちろん専門性や技術的な領域のそれらとは別枠の話ではありますが。

その為には徹底したホンネ主義、現実路線を以て戦略的に考え最悪の状況下においても機能するであろう コンセンサスの構築 に努めるべきでは無いでしょうか。

立場主義という欺瞞を許さない戦略を

満州国の経済史を専門として金融を通じた側面について研究する東京大学東洋文化研究所 安富歩 教授の現代日本論によれば、あらゆる空論に満ちた現代の日本にはそれぞれの立場(利権構造)を守ると言う原則以外存在せず、それらを偽善的なレトリックで保全しようとする ’ 立場主義 ’ こそが思想的実体として存在していると論じられています。

ja.wikipedia.org

 

それらの論点を導き出す際に現代の日本のエリート達の一部がよく使用するであろう言語体系を ’ 東大話法 ’ とし解説されています。
自らの利権、そこから得られる実益(天下り等の収入)の保全こそが優先事項であることを合法的に認めさせるためのテクニックとして一般化してしまっているいわばオレオレ詐欺のやり方(話し方)だと思います。
そういった風潮により、さらに巨大な利権調整の伏魔殿であろう大都市東京の防災面におけるボトルネック化が常態的に増大してしまってきていると言うことなのでしょう。誰も責任を取ろうとせず、意味の無い細か過ぎるセクショナリズムだけが蔓延しているのですから。
それが先程の福和先生の発言につながって行くとも思います。
しかしながらその様な話も実際の震災となれば全く無意味な論点となることは論じるまでもありません。いかに助け合うか、生き延びるか。いざとなれば人間の底力とは大きな力となるはずでは無いでしょうか。
空虚な現代日本の立場主義をしっかりと見据えた上での大人の戦略、つまりは’言葉’ですね。
そこに今からでも注視しておくべきでは無いでしょうか。

優先順位という欺瞞を許すな 命を守るか社会を守るかの時系列的欺瞞こそ盲点

後述しますが各行政機関における震災シミュレーションを精査するとある種の時系列的な推移が予測されています。それは以下の様な物です。

3日目までは人命、そのあとはインフラ 

つまり震災初動は命を守るが次第に社会(インフラ)を守るように切り替えていかざる負えないはずだ、と言うパターンの予測がチラホラ見受けられるのです。3日過ぎたら人命は軽んじられても致し方無しと言う様な物言いでしょうか。
福和先生の予測にも同様な論調も見られます。各主体はそれぞれの優先順位を探って復興プロセスを進行して行くはずだと言うニュアンスの見解です。

さあ、これに先程の立場主義者が乗っかたらどうなるでしょうか?
まるで昔のプロレスの反則技の様なものでポーズだけを見せたらその後は大手を振って自分たちに都合が良い方向へシフトさせて行く事が正当化されてしまうのでは無いでしょうか。
さすがの日本でもと暴動すら懸念される福和先生の懸念が的中してしまわない様に今から少しでも備えておきたいものです。
もちろん社会を生かす事、その重きは当然であるとは言えです。

生き残る可能性のある人命を切り捨てる事など絶対に許してはいけないと思います。

阪神淡路大震災における神戸での人々の行動

大変に参考になる事例があります。私の父が震災直後(2日目)の神戸へ行った時の事です。不謹慎ではありますが野次馬としてです。
詳細は父もうろ覚えなのですが何しろ神戸の駅近くまで行ったそうです。凄まじい状況だった様です。そこで見たのは30〜40人程度に集まっている人々の様子でした。
その集団は集まり何事かを相談、話し合っていたそうです。そして一見して野次馬と思しき父を見るや否や皆で厳しい表情で父を睨みつけてきたそうです。そのような集団は周辺に沢山見受けられたそうです。
父は流石に居た堪れずそそくさと退散、早々に帰路についたそうです。
しかしこれはリアルな情報と感心しています。

瓦礫の山と崩壊した地域の住民達はまずは単独行動を避ける様に信頼おける知人などを頼りにしてかグループ形成をし身の保全を図るのです。
その場合適当な人数は30〜40人と言う事なのでしょう。

これがまず基本になる 主体の形成プロセス です。

次にグループ内の秩序を形成し周囲の状況(主体の形成状況)を分析して自分達の主体性(どこに行くのか、何をするのか、誰に付くのか)を模索していたのです。

このプロセスを一つのロールモデルとして考えて行くことにしようと思います

ホンネの会を立ち上げ中部地方から全国に防災の知恵の拡散に尽力される福和先生の考え方にも通底するリアリズムを観て取れます。
本当に何と何が絡み合うのかを一つ一つ積み重ねるように把握してゆくのです。
情報の洪水に距離を取り冷静かつ実直に実効性を求めて行きましょう。

次号、さらに考察を深めます。

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

これからのブログ記事の流れ

前記事の西荻窪プランについての今後の記事の内容の流れ(予定)をまとめておきます。


1. 名古屋大学名誉教授   福和伸夫 氏の2019年の著書

必ずくる震災で日本を終わらせないために。(時事通信出版局

bookpub.jiji.com


が最も参考になりました。その中からの抜粋、及び感想からブログ筆者の経歴の紹介も交えつつ西荻窪プランの誕生の経緯を解説します。


内閣府中央防災会議 「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」主査  名古屋大学名誉教授  福和伸夫ja.wikipedia.org

gentosha-go.com

2. 内閣府、東京都、国土交通省経済産業省、各地方自治体等の首都直下型地震に対する予想や対応策等を比較検討して観ます。
各主体の会議における議事録等からの抜粋をいくつか紹介し日本における首都直下型地震に対する備えやその問題点を考察して観ます。

著名な専門家の学説や取り組みについても調べて観たいと思います。

www.bousai.metro.tokyo.lg.jp

www.bousai.go.jp

www.mlit.go.jp


3. 震災時に関連するであろう交通、住居等に関わる法的な問題点、または規制等について調べて観ます。


4. 2022年現時点においての各主体(国、都、企業等)の防災についての取り組みをインタビュー形式において再確認して観ます。そこからやはり問題点等を導き出せると思います。

5. 以上の情報を元に西荻窪プランのシミュレーションを様々な様式にて行い記事を更新していきます。具体的な方法、場所の比較検討などを動画を通してまとめて見る事もしたいとも思っています。

以上の流れで記事を更新していく予定です。ブログとしてある程度の内容になりましたらSNS、動画による訴求、検証もはじめて行きます。

どの様な流れになるか分かりませんが現状に対し少しであれ前進の為の一助となる事を期待して行動したいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございます。